概要

発達障害の方々の力になる

昨今、少年犯罪、学級崩壊、いじめ、児童虐待などの小児・児童を取り巻く多くの問題が連日のように報じられ社会に衝撃を与えています。こうした児童精神医学に関する諸問題が急増し、社会的要請が高まっているにもかかわらず、わが国においては児童精神医学に関わる専門スタッフが絶対的に不足しています。自閉症スペクトラム障害などの発達障害を例にとると、早期発見とそれに続く早期療育が発達の促進や適応の改善に重要とされていますが、発達障害やこころの問題を持つ子どもを診察する医療機関は限られていて、受診予約をしても長期間待たされることが多いのが現状です。

この現状を改善していくためには、児童精神医学にかかわるシステムの整備と共に、高い技術と知識を習得した医師や心理士、言語聴覚士、作業療法士、精神保健福祉士、保育士、学校の教員などの専門家が他職種とネットワークを形成して課題解決に当たることが必要と考えられます。児童精神医学・医療を担う多様な人材に加えて、医療との連携も視野に入れつつ地域で中核的役割を担うことの出来る人材も求められています。

同時に、児童精神医学・医療の充実には、発達障害や子どものこころの問題の理解を深めて治療の改善を目指す研究の推進が必要です。

このような課題に応えるべく、こころの発達診療部は、2005年4月の開設以来、発達障害や子どものこころの問題の診療を行っています。1967年から精神神経科小児部で行ってきた発達障害の治療教育などの蓄積を踏まえつつ活動を展開してきました。開設から5年間は、こころの発達にかかわる多様な人材の育成に対応しやすいように発達障害を中心に多岐にわたる疾患の患者の診療に力を入れてきました。2010年4月からは、診療の質の向上などにつながる研究に対応する専門外来の充実を図っています。また、大学病院全体の方針にもあわせて、集中的に専門的な診断・評価を行って治療方針を策定し、地域の医療・療育・教育機関につなげるということに重点を置いています。院内での連携にも力を入れており、精神神経科はもちろん、小児科との連携を深めるようにしています。そして、こころの発達にかかわる人材の育成や啓発、ネットワーク作りについては継続的に取り組んでいます。

診療、教育、研究という活動をバランスよく発展させて、発達障害をはじめとしてこころの発達について困難を感じている方々の力になることを目指しています。